クールな御曹司と愛され新妻契約
外に出るなら尚更、時間の短縮にもなるし……。
うん、メインエントランスに降りてから、連絡を入れよう。

社名の刺繍が入ったエプロンを脱ぎ綺麗に畳みながら思考を巡らせていると、ちょうど良く玄関チャイムが鳴る。

重厚な玄関ドアがガチャリ音を立て、開いた先に、ダークネイビーの三つ揃えのスーツ姿をきっちり着こなした冷泉様が立っていた。

「三並さん、ただいま帰りました」

「お帰りなさいませ! すみません、一階に降りておこうと思っていたのですが、一足遅くなってしまいました」

急いでトートバッグの中へエプロンをしまい込み、お辞儀をする。
すると冷泉様は優しく微笑みを浮かべて、軽く首を振った。

「いいえ、大丈夫です。三並さんの外出準備が整っていれば、このまま出ようと思うのですが……」

「はい! 全て終わりましたので、準備できております」

彼の伺うような視線に私は緊張気味に頷くと、黒いスーツのジャケットを着込み、脱いだスリッパを掃除道具を入れたトートバッグへ入れてから肩にかける。

しかし彼は玄関のドアを後ろ手に閉じてから、困ったような顔をした。
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