クールな御曹司と愛され新妻契約
この心臓の音を知られたくなくて、握った手を胸に当てながら冷泉様を見上げれば、彼は長い睫毛に縁取られた目を細めた。

そうして、勿体振るような緩慢な動きで肘を曲げながら、吐息が聞こえるほど近くまで顔を寄せると、強引に私の唇を奪った。

「……っ!」

まさかの二度目のキスに、驚いて息ができない。

初めてのキスとは違う、何度も角度を変えながら唇を啄むようなキスに、瞳がじわじわと熱くなる。

「唇、開けて」

優しく唇を解放した彼は、高い位置から私を見下ろしたまま甘い命令を下した。

彼からキスをされることに、嫌だ、なんて少しも感じなかった。
それどころか、こうして与えられる甘美な毒に、抗えない。

おそるおそる僅かに唇を開けば、そこに熱く柔らかな舌が差し込まれ、ゆっくりとまるで指導するように絡められるそれに、どんどん体が熱くなっていく。

くちゅっ、と羞恥を感じるような水音が響く中、彼は今まで壁についていた手を私の肩や腕に這わせる。
そのまま体のラインをゆっくりと撫でる手のひらが、次第に下へ下へと向かっていく。
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