クールな御曹司と愛され新妻契約
全身が心臓になったのではと錯覚するほど、どこもかしこもドキドキしている。

「可愛い。これでもう、俺を恋人として意識できそうですか?」

「ううっ、はい」

彼……千景さんは、涙目の私の頭に手を置きながら、よしよしと言いながら撫でている。

この人はなんでこんなに余裕そうなの、と思わず唇を噛み締めてしまう。

彼は私の前に恭しく片膝をつくと、彼の激しいキスのせいで肩からずれ落ち、肘に引っかかっていた私のジャケットを引き上げてくれた。

「それから。その服装では正直、準備ができているとは言い難い。今夜は面接じゃなくて、俺たちの初めてのデートですから」

私の襟元を正しながら、千景さんは茶目っ気たっぷりに微笑む。

乱れた格好を彼に晒した上に面接と揶揄われてしまった私は、耳まで真っ赤に染め上げた顔をお辞儀という形で咄嗟に隠す。

「すみません、本日は着替えなどを持ってきていなくて……っ」

つい、いつもの癖でセットアップスーツで出て来てしまったけど、考えてみれば確かにそうだ。
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