クールな御曹司と愛され新妻契約
祝日じゃないからオフィスカジュアルで出勤するなんてできないし、今回は何か着替えを持参すべきだったのに…….!
って、あれ? 今夜は初めてのデートというより、作戦会議じゃなかったっけ……!?

羞恥心と混乱で俯いたままの顔が上げられない。

「くくっ。大丈夫、着替えなら俺に任せてください」

ひとしきり笑った千景さんは、私のつむじに「ちゅっ」とリップ音を立ててキスをする。

ひゃっ! ま、またキス……された……っ。

むずむずするような恥ずかしさに悶えながら、『これは英国式の挨拶、これは英国式の挨拶』と心の中で何度も呪文のように唱える私を、彼はエスコートするように自然と腰を抱き寄せて、玄関のドアを開いた。



マンションの地下駐車場へ向かうと、滑らかな白いボディが美しい英国製スポーツセダンの助手席ドアを千景さんが開く。

汚れひとつない車内には、キャメルで統一された革張りのシートとスポーティーで高級感あふれる内装が広がっている。
私は「お邪魔します」と一声かけてから、そーっと乗り込んだ。
< 46 / 192 >

この作品をシェア

pagetop