クールな御曹司と愛され新妻契約
祝日の臨時出勤の時に何度かこれで自宅まで送っていただいたことがあるが、何度乗せてもらってもこの座り心地の良い座席には慣れない。

今は冷んやりと気持ちが良いこの革張りの座席も、冬はシートヒーターで温かくなるんだから、私の実家が所有している車とは大違いの快適さである。

「あの、今からどちらへ向かわれるんですか?」

「それは着いてからのお楽しみかな」

「か、かしこまりました」

いつもならドライブ中には他愛もない話に花を咲かせるのに、先ほどのキスとデートという肩書きのせいで、途端に何を話したら良いかわからなくなってしまう。

「ええっと、では、今週末の三並家訪問の件なのですが……」

千景さんへ作戦会議の必要性を伝えてみたが、彼は「設定は考えましたし、わざわざそんなことをしなくとも大丈夫ですよ」と、余裕そうな表情で答える。

「それよりも」と話題を変えた千景さんによって、彼の家での同居開始をいつにするかという件について話し合うことになった。

そうしているうちに千景さんの運転する車が、銀座のとある駐車場で停車する。

彼にエスコートされ到着したのは、なんと高級ブランドのブティックだった。
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