クールな御曹司と愛され新妻契約
それにしてもお会計が大変なことになりそう……っ!

忘れ物をした自分自身のせいとはいえ、私は自宅マンションの一ヶ月分の家賃に相当するワンピースドレスだ。
ここは、清水の舞台から飛び降りる気持ちでいくしかない。

急いで自分の着ている黒のスーツを脱ぎ捨てて、ワンピースドレスには慎重に丁寧に手を通す。

「合わせてヒールもご用意させていただきましたので、お着替えが終わりましたらご試着ください」

「はいっ」

扉の外から促され、着替え終えて鏡を見ながらスカートの裾を整えていた私は、慌ててフィッティングルームから出た。

今まで履いていた仕事ようの黒革のパンプスの隣に並べられていた、シフォン生地の華やかなバックリボンが閑麗なラウンドトゥヒールに爪先を入れる。
アイスブルーの冷たい配色だが、とても女性らしい印象の爽やかなヒールだ。

「どうでしょうか」

目の前で佇んでいた千景さんに恐る恐る尋ねると、彼は満足げに微笑みを浮かべる。

「凄く素敵だ。麗さんによく似合っています」
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