クールな御曹司と愛され新妻契約
ときめきが喉に迫り上がって、きゅうっと苦しい。

「……あ、ありがとうございます。では……お言葉に、甘えさせていただきます」

お礼の言葉を喉から絞り出すのが精一杯なほど、私の心臓はドキドキとしていた。



次に向かったのは、フレンチの一流グランメゾンだった。
クラシカルで上品な店内、その石壁にはカーテンのように滝が流れており、ドレスアップした女性奏者が奏でているハープの優雅な調べに、思わずうっとりと聴き入ってしまう。

うちの会社でも様々な料理やマナーの研修が行われ、講師にフレンチシェフを呼んで簡単なメニューを習うことはあるものの、会場はいつも会社の中。
こんな素敵な場所でフレンチを食すのは初めての機会だ。

素材の活かし方、彩り、盛り付け、そして料理の味とサービスのタイミングまで、学べることはぐんぐん吸収していかねば。

内心『よしっ!』と気合を入れて、仕事モードの鎧を装着する。

「いらっしゃいませ、冷泉様。今夜という日に、当店をお選びくださりありがとうございます」

奥の個室に通されると、千景さんと顔馴染みらしいシェフが、わざわざ厨房から挨拶にやってきた。
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