クールな御曹司と愛され新妻契約
そうして、私が借りてきた猫のように大人しく座りながら恐縮しっぱなしの間に、ノンアルコールのカクテルが運ばれてくる。

「乾杯」と二人でグラスを傾けると、洗練されたスタッフたちによる完璧なサーブで、シェフのお任せで作られる十二皿のフルコースが始まった。

季節の食材を使用したアミューズ、オードブル、スープと続き、その全ての料理の華やかな見た目や繊細な美味しさに、ただただ圧倒されてしまう。

メインの肉料理であるフランス・ラカン産ピジョノーを使用した胸肉のロティには、オレンジの香りが爽やかな蜂蜜のビガラードソースが添えてあった。

絶妙に火入れされた赤身肉は、ソースを纏わせて口の中に入れた瞬間に濃厚な風味が広がり、ほろりと柔らかくとろける。

「すっごく、美味しい……」

「それは良かった」

その後も感動しっぱなしだったシェフお勧めの十二皿が終了し、食後にはコーヒーとスーツ、そして更にミニャルディーズが運ばれてきた。

心踊る小さなスイーツたちを摘み終え、千景さんに「本日はご馳走様でした」とお辞儀する。
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