クールな御曹司と愛され新妻契約
けれど千景さんは二重まぶたを優しく細めて、青い瞳で真っ直ぐに私を見つめるばかり。

そして彼はおもむろにスーツジャケットの内側に手を伸ばすと、ベルベット生地の小さな箱を取り出した。

「言ったでしょう? 俺はあなたに『結婚してほしい』って」

そう言って、上品なエメラルドグリーンのそれを開く。
中にはダイヤモンドの指輪が鎮座していた。

「えっ、これは……?」

「婚約指輪です。プラチナと迷いましたが……俺はこれが、あなたに一番似合うと思いました」

英国では婚約指輪や結婚指輪のアームにはゴールドを使用するのが一般的なんです、と彼がその指輪を指先で摘む。
天井に輝くシャンデリアの光を受けて、それはキラキラと眩しく輝いた。

「でっ、でも、私には千景さんから婚約指輪をもらうような資格なんてありません」

「贈り物に資格はいりませんよね? 俺が、あなたに婚約指輪を贈りたかった。それだけです」

アームの中心にあるダイヤモンドをぐるりと囲むように、メレサイズのエメラルドが散りばめられている華奢でフェミニンな指輪。
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