クールな御曹司と愛され新妻契約
「……こんなの、夢みたいです。ありがとうございます、千景さん」

「どういたしまして。俺の思った通り、麗さんにピッタリだ」

偽りの婚約だと知っているのに、私は、まるで本物の幸福の如くそれを噛み締める。
婚約指輪の輝く左手を胸元できゅっと抱きしめ、心の奥底から湧き出る感情のまま、幸せな微笑みをこぼした。



金曜日も、千景さんに連れられるがままデートへ向かい、夜景を見ながら唇を重ねた。

心臓がいくつあっても足りない! と叫びたくなるほど、彼の言葉や仕草が甘くて、私は内心翻弄されるばかり。
赤面しつつも、なんとか恋心がバレないように頑張ったつもりだ。


そうして、偽装婚約をしてから六日目の土曜日。
実家へ千景さんと挨拶に行くまで、残すところあと一日となった。

明日から千景さんの家で同居させてもらうことになったので、今日中に最低限の荷物をまとめなくてはいけない。

とは言え、完全に引っ越しをすると会社へ速やかに転居届を提出しなければいけないので、休日に少しずつ荷物を片付けながら、時期を見て引き上げることになっている。
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