クールな御曹司と愛され新妻契約
千景さんか、両親かな?
そう思いながら軽い調子で画面をタップして、一気に体が凍りつく。

「え……!? なんで? 私の連絡先なんて知らないはずなのに……」

なんと、それは、トラウマの元凶とも呼べる幼馴染からのメッセージだった。

偽装婚約をした祝日の夜のうちに、両親へは『誕生日は、本当に婚約者と婚姻届を持って挨拶に行くから、幼馴染には二人からちゃんと断りを入れておいてね』と電話しておいた。

本来なら幼馴染の連絡先を聞き、自分から直接『家の事情に巻き込んでしまってすみません』と頭を下げるのが筋なのかもしれないが、どうにも彼のことは本当に苦手で、出来れば再会を避けたいと思ってしまう。

元はと言えば父の仕事先で再会して男同士で交流しているみたいだから、そこは両親がきっちり謝罪と御礼をしてくれれば……と、願っていたのだけれど……。

何を考えているのか、両親は私の連絡先を幼馴染に渡したらしい。

恐る恐るトークルームを開くと、【三並、久しぶり。連休明けに親父さんから聞いた。俺のことは全然気にしなくていいよ】というメッセージが表示された。
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