クールな御曹司と愛され新妻契約
すると千景さんの答えに満足そうに頷いた父が、証人欄の埋まった白紙の婚姻届をテーブルの上に広げた。

「では婚姻届にサインをしよう。なかったら今すぐここで書きなさい」

や、やっぱり『今すぐサインしなさい作戦』できたか……っ!

ここで渋ると、絶対に婚姻届を両親が預かり、代理人として勝手に出しに行こうとするはずである。

しかし、千景さんは鞄からごく自然に婚姻届と彼の戸籍謄本、そして少し大きめのリングケースを取り出して、テーブルの上に広げた。リングケースの中には、美しいフォルムの結婚指輪が佇んでいる。

「婚姻届はこちらで用意させていただきました。お父様とお母様から結婚のお許しをいただけましたら、すぐにでも自宅近隣の役所で提出したいと考えています」

まさか婚約指輪だけでなく、結婚指輪まで用意してくれているなんて知らなかった私は、驚きのあまり目を丸める。

両親はテーブルの上に出された〝本物の婚約者である証拠〟に神妙な顔で頷くと、ボールペンを手に取ると婚姻届の証人欄へ名前を書き込むと、すぐに朱肉を広げて捺印した。
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