クールな御曹司と愛され新妻契約
もしもここに幼馴染がいて、彼と無理やり結婚させられていたらと思うと……ゾッとする。

互いの幸せを願える契約結婚が、両親にバレることなく無事に進行することになり、私は無意識に力を入れていた肩から、フーッと安堵の息を吐いた。


その後は例年通りの食事会が行われ、両親は「千景君はもう家族の一員も同然だから」なんて言いながら、先ほどまでの態度とは打って変わって終始和やかな空気に包まれた。

どうやら娘が自分たちが定めたタイムリミットまでに嫁へいくことが、心底嬉しいのだろう。
まさか数字型の蝋燭に火を灯した誕生日ケーキを前に、歌まで歌ってくれるとは思わなかった。

……千景さんにも歌ってもらえて、嬉しさに悶えたのは内緒である。



夜八時を回った頃、両親との顔合わせを終えた私達は、「見送りはいらないからね」と伝えて実家を出る。

小さな一軒家の庭を通ってアプローチの階段を降りたところで、車庫に停めていた白い英国製高級車のロックが解除され、ウインカーランプが瞬いた。

「今日は本当にありがとうございます。お陰様で、助かりました」
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