クールな御曹司と愛され新妻契約
「それは、両親にとの初めての顔合わせが、上手くいって嬉しかったという意味で」

「こんな高級車に乗ってる男、どう考えたっておかしいだろ。騙されてるんじゃないの? お前、昔からすぐに騙されるし……。もしその男に借金があるなら俺が一緒に返してやる」

昔から『麗』なんて呼んでいなかったくせに突然呼び捨てにした挙句、千景さんの悪口……?

それに『騙される』も何も、勝手に告白して勝手に『罰ゲームなのに本気にしてんの?』なんて言って嘲笑った挙句立ち去ったのは、そっちの方だ。
騙されてなんかいない。

この人は一体何を考えているんだろうかと戸惑った私は、自分を守るように両手をきゅっと胸の前で握り締める。

今まで怪訝な表情で眉根を寄せながらも静観していた千景さんは、夜の静けさを破るように、バタンと車のドアを閉めた。

「まるで俺が悪人のようですね。まったく、ひどい言いがかりだ」

甘やかな低い声音で苦笑まじりに告げ、急に私の腰に優しく手を回して彼のそばへグッと引き寄せる。

「初めまして、麗さんの婚約者の冷泉千景です。麗さんと俺は確かに結婚を誓い合った仲ですので、どうぞご安心ください。
正式な夫婦になるために必要な婚姻届も、明日中に役所へ提出する予定ですから、あなたにご心配していただく必要はありません。身元を確認したければ……こちらをご覧ください」
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