クールな御曹司と愛され新妻契約
「確かあなたは、『二十六歳までに貰い手が見つからなかったら俺が貰いますよ』なんて、麗さんのお父様に言い出されたんでしたね。
彼女の誕生日まで一ヶ月もないこと、そしてご両親の願いを知っていながら無理な期限を設け、親切な顔をしながら彼女を簡単に手に入れようとするなんて……。
あなたこそ、人を騙すのもいい加減にしたらどうだ」

千景さんは私を守るようにさっきよりもさらにグッと距離を寄せて抱きしめると、私の腰にその逞しい腕を回した。

頬が、彼のスーツを着た胸板に当たる。

人の前で千景さんとこんなに密着するという羞恥心と、彼の腕の中にいるという安心感……そして、私の言いたかったことを全部幼馴染にぶつけてくれた彼への想いが溢れて、瞳にじわじわと涙の膜が張ってきた。

けれど幼馴染の前では決して涙を見せたくなくて、私は唇を噛み締めて、顔を隠すように千景さんの胸へすがる。

「っくそ。あんたには他にもお似合いの女がいるだろ! 俺にはずっと、最初から麗だけだったんだ。……頼む、この通りだ。麗を、俺に返してくれ」
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