クールな御曹司と愛され新妻契約
「こんなとこ、外から丸見えで……っ」

最後に、千景さんは私の唇を食みながらちゅっとリップ音を残し、そろりと唇を離す。

助手席のシートにとろけるようにくたりと背中を預け、息も絶え絶えになってしまった私は、「はあ、はあ」と熱い息を零しながら、運転席の彼を見上げる。

「あなたの名前を他の男に呼ばれただけで嫉妬して……我慢できなくなった。あなたの全てを、独占したい。……こんな風に思う俺を、軽蔑しますか」

千景さんはグッと感情を押し殺したような声で言うと、私の頬へひたりと手のひらを這わせた。
ドキドキして、きゅーっと胸が締め付けられる。

「……そんなこと、ないです。むしろ……嬉しいと、思います」

私の唇から零れた本音に、彼は僅かに目を見張ると、まるで大切な物でも見つめるかのように眩しそうに目を細めた。


……こんなの、ずるい。
これ以上好きになっちゃいけないのに……、苦しいよ。

小さくジャズが流れているだけの無言が広がる車内で、私は早鐘のようにうるさい心臓に手のひらを当てて、『お願いだから静かにして』と念じながらぎゅうっと目を閉じた。
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