亡いものねだり
だけど、学校が始まって急に彼女の心は離れていった。


あまり目立ちたくないから教室に来ないで欲しいと言われた。


休日にデートに誘っても、マネージャーを務めるサッカー部の活動を理由に断られ続けた。


いい加減我慢の限界……そんな時、向こうから『すれ違い』を理由に別れを切り出された。


どうしようもなく腹が立った。


すれ違いなんかじゃない、君が勝手に変わってしまったんじゃないか、と。


はっきり告げると、彼女は悲しさと寂しさが混在した表情で一言、「ごめんね」。


それが彼氏と彼女としての二人の、最後の言葉だった。



一ヶ月後、穂香がサッカー部の瀬川先輩と付き合っているという噂を聞いた。


いてもたってもいられず、僕は先輩と二人で会って問い詰めた。


先輩は交際をすぐ認め、彼女に内緒にすることを条件に真実を語った。


唯一彼氏持ちになった穂香が女子グループ内でいじめられていたこと。


原因である海斗にそれを絶対に打ち明けられなかったこと。


偶然穂香のケガに気づいた先輩が問い詰めて聞き出し、すぐにイジメをやめさせたこと。


その直後、穂香が先輩への恋慕と海斗への罪悪感で悩み別れに踏み切ってしまったこと。




そして……そんな彼女を放っておけず、先輩は穂香の告白を表面上は受け入れたこと。
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