亡いものねだり
話している間、先輩は一度も僕の不甲斐なさを責めなかった。


それどころか、勝手な行動をして本当に申し訳ない……と頭を下げられた。


僕はそれ以上聞いていられなくなって、先輩の前から逃げ出した。


彼と話せば話すほど惨めになって……そして何も出来なかった自分が悲しかった。



どうしても我慢出来ず、僕は先輩との約束を破って穂香に謝罪しに行った。


ただ、自分の不甲斐なさを謝りたい……その一心だった。


しかし、彼女は真実を聞き出したこと、そして謝りにきたことに対して激怒した。


海斗は何も悪くない。そんな海斗を傷つけたくないから黙って別れたのに。


私を完全に忘れて欲しくて、瀬川先輩に頼み込んで交際を受け入れてもらったのに。


「海斗は、やっぱり凄くいい人で……凄く残酷な人だよ」



別れ際に彼女が放った一言が、完全に僕を砕いた。



翌日。


僕は、穂香と先輩に向けた手紙を残して屋上に立っていた。


その時の僕に未練は何もなかった。




もし1つ叶うなら……せめて彼女の記憶の中だけでも、生きていたい。
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