亡いものねだり
だからもう、終わりにしよう。


瀬川先輩は正しくて強い人だ。


過去の亡霊に憑かれた穂香を迷うことなく救った。


死んだ僕の気持ちを勝手に代弁して、辛い過去を断ち切った。


穂香はきっと……もう僕との思い出に苦しむことはないだろう。


いずれ僕のことを完全に忘れて……瀬川先輩みたいな素敵な人といつか結婚して、そして誰もが幸せになって……!



「――そんなの嫌だッッッ!」



僕は頭を抑えて獣の様に慟哭した。


前に進むって何だ⁉ 過去を断ち切るって何だ⁉ 生きる意味って何だ⁉


何も解決してないじゃないか。誰一人幸せになってないじゃないか。


そうやって都合の悪いことを忘れて生きるのが大人になるってことなら……僕は大人になる前に死ねて良かったよ!
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