亡いものねだり
僕は目を見開いた。


「海斗と過ごした時間は、楽しいことも苦しいことも含めて私の一部。海斗にしか与えられなかったもの。だからね、私がこの世界にいるのはやっぱり海斗のおかげなの」



一点の曇りもない、感謝の言葉。


何て愚かなことを考えていたんだろう。


最後の最後になって、自分の愛した人の幸せを願えないなんて。


例えそれがどんなに報われないことだとしても。例え穂香に伝えられないとしても。


それを理解できたなら……僕が消えることは、きっと無意味じゃなくなる。


そんな唯一の希望を胸に、僕は精いっぱいの笑顔で言った。



「大丈夫だよ穂香。僕はきっと……幸せだった」
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