亡いものねだり
その刹那――ボロボロだったお守りに光が流れ込んで眩い輝きを放った。
彼女は穏やかな笑みを浮かべて、そっと僕の手を取る。
――やっと彼女に触れられた。
驚く僕の手を引いて、彼女は歩き出す。
「ねえ、どこに行くの?」
僕が慌てて隣に並ぶと、彼女は首を傾げて当然の様に答えた。
「決まってるでしょ……お祭りはまだ終わってないよ?」
お守りが息を吹き返したからか、僕の体はまだ消えていない。
僕は今度こそ、本物の笑顔を彼女に向けて言った。
「そうだね。これでもう――亡いものねだりなんかじゃないよね」
いつか終わる夢が、まだ続いてくれることに感謝して――
僕らはしっかりと手を繋ぎ、蛍に見送られながら森の中へ消えた。
(終)
彼女は穏やかな笑みを浮かべて、そっと僕の手を取る。
――やっと彼女に触れられた。
驚く僕の手を引いて、彼女は歩き出す。
「ねえ、どこに行くの?」
僕が慌てて隣に並ぶと、彼女は首を傾げて当然の様に答えた。
「決まってるでしょ……お祭りはまだ終わってないよ?」
お守りが息を吹き返したからか、僕の体はまだ消えていない。
僕は今度こそ、本物の笑顔を彼女に向けて言った。
「そうだね。これでもう――亡いものねだりなんかじゃないよね」
いつか終わる夢が、まだ続いてくれることに感謝して――
僕らはしっかりと手を繋ぎ、蛍に見送られながら森の中へ消えた。
(終)