亡いものねだり
勝負にはあっさり負けた。


「アハハハッ! 海斗、一匹も獲れないとかヤバくない⁉ 去年より更にヘタになってるじゃん!」



今まで見たことがないくらい笑い転げる穂香に、僕は悔しさのあまり反撃する。


「うるさいな……穂香だってたった二匹じゃないか。五十歩百歩だよ」

「でも負けは負けだよ? 何でも一つ、言うこと聞いてくれるんだったよね?」

「うう……確かに言ったけど」



背中に両手を回して意地悪な笑みを近づける穂香に、僕はたじろぐ。


「どーしよっかなー……クジ引きで一等が出るまで帰れまテン! とか?」

「出る頃には財布すっからかんでどのみち帰れないよ!」

「私、欲しいなあ……一等のニンテンドース〇ッチ」

「しかもあげる前提⁉ 貢がせる気満々なの⁉」



怒涛の突っ込みで息を切らしていると、今度は鈴を転がす様な声で穂香は笑った。

「ウソ。私がお金なんかで満足すると思う?」

「ごめんそれかえって怖いんだけど!」



一体何をさせられるんだろう……と身構えた僕の前で彼女は俯いた。


「好きな所……」

「え?」

「私の好きな所、三つ言って欲しい」

「好きな所を三つ……」



僕は気恥ずかしさと困惑で彼女と同じように俯いてしまう。


「別に今すぐじゃなくていいよ! 祭りが終わるまでに考えて欲しいなって。海斗って普段そういうこと絶対言わないから」



なぜか僕以上に恥ずかし気な穂香を見て、はっきり告げる。


「分かった。この祭りが終わる頃になったら伝えるよ」

「うん。約束、だよ?」

「当たり前だろ……穂香との約束は絶対に守るよ」



君が僕に、そうしてくれたように。
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