ストーカー
これのために走って来たみたいだ。


それを見て璃桜は目をパチクリさせた。


「お前も律儀だなぁ。総合グラウンドでまた練習するだろ」


璃桜は呆れた声で言いながら、プリントを受け取る。


「そうだけど、こういうの忘れたらシャレになんないだろ」


確かに、大会前のメニュー変更は大切なことだ。


特に璃桜は将来有望な選手だから、部活メンバーが大切にするのは最もだった。


「郁は正しいことをしたと思うよ」


郁の行動にうんうんと、頷くあたし。


「はぁ?」


あたしに、わかったように同意されても納得できないのか、郁は眉を寄せている。


その瞬間……。


また、強い視線を感じて振り向いていた。


しかし、今度も誰もいない。


遠くから誰かが追いかけて来る様子もない。


「遙、どうかしたか?」


璃桜が首を傾げて聞いてくる。


正体不明のもののために心配させるわけにはいかない。


「ううん……なんでもない」


そう答えたが、スッと背筋を寒気が撫でて、あたしは身震いをしたのだった。
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