ストーカー
恐怖で支配されたこの部屋の中、どうもがいて逃げ出せと言うのだ。


「へぇ、いいんだな?」


楽し気な声が耳元から聞こえて来る。


果物ナイフが下ろされた代わりに、耳を舐められた。


ヌルリとした唾液が耳に絡み付き、悲鳴をあげそうになる。


子供のようにひっひっとしゃくり上げて涙を流しても、相手は笑顔をたたえたままだ。


この人は狂ってる……!!


「今すぐ前谷璃桜に連絡して別れろ」


そう言われ、膝にスマホを置かれた。


画面ではすでに璃桜の電話にかけている表示が出ていた。


「うっ……」


こんなところで璃桜と別れることになるなんて!


悔しくて、悲しくて、また涙が出た。
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