ストーカー
「なにしてるの!?」


そんな悲鳴が聞こえてきて、カッターナイフが奪い取られていた。


「え……?」


泣いているお母さんが抱きしめてきて、頭の中が混乱する。


「お母さん……?」


「大丈夫。大丈夫だから!」


そう言われてようやく自分がなにをしようとしたのか、理解した。


ハッとして手首を確認する。


傷はついていなくと、ホッと安堵のため息を吐き出した。


「ごめんお母さん。あたし、なにしようとしてたんだろ」


そう言って笑ってみせるけれど、上手く笑えなかった。


お母さんが異変に気が付いてくれなければ、今頃どうなっていたかわからない。


ここままじゃあたしはダメになってしまう。


「明日、病院へ行こう」


お母さんにそう言われ、あたしは頷く事しかできなかったのだった。
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