ストーカー
肩をゆすってみても起きる気配がない。


「お母さん?」


もう1度呼びかけた時、手にヌルリとした感触があって動きを止めた。


恐る恐る自分の手を確認する。


月明かりに照らされた自分の手が、黒く濡れていることに気が付いた。


「え……?」


ツンッと刺激の強い鉄の臭いがして、袋に入れられていた死体を思い出す。


同時に尻餅をつき、そのまま後ずさりをしていた。


これ、お母さんの血!?


早く誰か呼ばなきゃ!


そう思うのに、体が震えて立ち上がる事も難しい。


懸命に手を伸ばしてナースコールを押そうとするが……その手が、誰かによって掴まれた。
< 231 / 244 >

この作品をシェア

pagetop