ストーカー
☆☆☆
5時間目の授業の途中、窓の外を見ていると小雨が降りはじめていた。
このまま振り続けたらグラウンドが濡れてサッカーができなくなっちゃう。
璃桜も雨が降り始めたことに気が付いたようで、後ろの席の山室郁(ヤマムロ イク)とこそこそ会話をしている。
郁もサッカー部のエースで、2人は教室内でもいつも一緒にいた。
今もきっと部活の心配をしているのだろう。
「加藤、次の問題」
突然教卓の前に立つ先生に名指しされて、あたしは「えっ!?」と、声上げた。
ぼーっとして璃桜のことを見ていたから、先生の話を全然聞いてなかった!
慌てて立ち上がり、教科書と黒板を交互に確認する。
今は国語の授業なのに数学の教科書を出していることにようやく気が付いた。
「あ、ごめんなさい!」
すぐに謝り、机の中から国語の教科書を引っ張り出してページを開く。
その間にクラスメートたちがクスクスと笑う声が聞こえてきた。
うぅ……。
穴があったら入りたい。
「お前、しかりしろよ」