ストーカー
お父さんの怒鳴り声にあたしは自分の耳を疑った。


あたしは今とても怖い目に遭っているというのに、どうしてそんなことが言えるんだろう。


あたしだって普通に外へ出るし、買い食いくらいする。


それがダメだというのなら、もう家に閉じこもっているしかないじゃないか。


それに、今はそんなことを言っている場合じゃない。


もしかしたら、犯人はまだ付近にいるかもしれないのだ



「これは証拠よ。警察へ持って行きましょう」


青ざめた顔のお母さんが気を取り直すように言い、写真をかき集めてそう言った。


「警察だと? どうしてくれるんだ、お前のせいで……!」


次のお父さんの言葉を聞く前に、あたしは家を飛び出していた。


家族の心配をするより先に、平和な日常を壊されたことに怒るなんて話にならなかった。


どんな家庭でも問題の1つや2つはある。


家族全員でその問題を乗り越える覚悟がないのなら、無視するしかなかった。


「遙!?」


後ろからお母さんが悲鳴のような声を上げて追いかけて来る。


「遙、危ないから家に戻って!」


あたしは一旦立ち止まり、振り向いた。


「だって、まだ犯人が近くにいるかも!」
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