運命ノ黒イ糸
なにより、この神山の山頂へ行くには道が厳しく、それこそたどり着けない人の方がおおいくらいなのだ。


「だからたどり着けるかどうかわからないってことかぁ」


あたしはスマホから視線を外してそう呟いた。


「そういうこと。今の時期だと余計に厳しいかもね」


山の上は寒さが激しい。


神山への登山客も夏に来ることが多いようだ。


「でも、この神社は不思議でね。本当に願いを叶えたい人が行けば、思ったよりも早く山頂までたどり着けるんだって」


佐恵子がスマホをポケットに戻してそう言った。


「えぇ~? それこそ都市伝説だよね」


いくら強い願いがあったって、山頂までの距離は変わらない。


登った人の感覚の違いだろう。


そう思っていると、保険の先生が戻って来た。
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