運命ノ黒イ糸
「今日はありがとう。楽しかったよ」


そう言って、二村先輩があたしの手を離した。


二村先輩の温もりが遠ざかると、なんだか寂しい気持ちになる。


「いえ、こちらこそ」


あたしはそう言ってお辞儀をしたけれど、すぐには動かなかった。


二村先輩も帰ろうとしない。


太陽は西へと傾いて、空はもうオレンジ色になっている。


「あのさ、朱里ちゃん」


二村先輩の声が少しだけ震えている。


あたしは自然と背筋を伸ばして、二村先輩を見上げた。


「俺と付き合ってくれない?」


その言葉にあたしの心臓はまた跳ねた。


今度はドクドクと早鐘を打ち始める。


「……はい」


返事をして頷いた次の瞬間、二村先輩の唇の温もりを感じていたのだった。
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