運命ノ黒イ糸
佐恵子みたいに、ちゃんと好きになってから付き合おうと思ったら時間がかかって仕方がない。


そんなことをしていたら、あっという間におばあちゃんになってしまう。


「なんで二村先輩のことを好きになったの?」


そう聞かれて、あたしは返事に困ってしまった。


あたしの小指には相変わらず赤い糸が結ばれている。


これを手繰り寄せた相手が二村先輩で、あたしもときめいたから。


なんて、言えない。


「前から気になってたんだよね」


これは嘘じゃない。


二村先輩の噂も、よく聞いていた。


「そうなんだ?」


「うん」


「でも、それならどうしてカオル君と付き合ってたの?」


「それは……」


もちろん、好きだったからだ。


二村先輩へのファン心とは違う。
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