運命ノ黒イ糸
佐恵子の指は糸をすり抜けてしまっている。


「あるよ。あたしだけに見える赤い糸が」


佐恵子はハーっと大きく息を吐きだした。


「もしかして、あたしが教えた神社に行ったの?」


「行った……んだと思う。たぶん」


「なにそれ、覚えてないの?」


佐恵子は首をかしげてそう聞いて来た。


「ううん。覚えてるけど、行ったのは夢の中でだから」


そう言い、紅茶をひと口飲んだ。


「夢の中?」


「うん。カオルと別れた日、泣き疲れて寝ちゃったの。その夢の中で神社を見た」


あたしの言葉を真剣に聞きながらも、佐恵子はスプーンでプリンをつついている。


信じたいけど信じられない様子だ。
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