運命ノ黒イ糸
☆☆☆

昼休憩に入った頃、それは突然に訪れた。


いつものようにお弁当を広げて食べようとしていたところに、草山くんが話しかけて来たのだ。


「いつも思ってたんだけど、朱里ちゃんのお弁当っておいしそうだよね」


後ろから声をかけられたでの、最初はそれが誰の声なのかわからなかった。


だから振り向いた瞬間、絶句した。


「作ってもらってるの?」


そう聞いてくる草山くんに、どうにかあたしは口を開くことができた。


「う、うん」


自分をアピールしたいなら、嘘でも手作りしていると言うべきだった。


でも、そんなことを考える余裕なんてなかった。


「へぇ。それじゃ朱里ちゃんも料理できるの?」


そこまで質問されて、ようやく今の状況を把握できた。


草山くんがあたしに話かけてくれているのだ。


これほどのチャンスは二度とこないかもしれない。
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