運命ノ黒イ糸
「なにがおかしいの?」


キョトンとした表情でそう聞いてくる佐恵子に「なんでもない」と、返事をする。


佐恵子は本当に真面目な性格をしている。


自分で作っていなくたって、作ったと言えばいいだけなのに。


そう思いながら教室へ到着すると、案の定草山くんはすでに登校して来ていた。


窓際の席で友達とおしゃべりをしている。


ただそれだけの光景なのに、顔がいいと様になって見える。


「あ、おはよう朱里ちゃん」


草山くんがあたしに気が付いてそう声をかけて来た。


あたしは一瞬にして緊張してしまう。


「お、おはよう……」


少し震える声でそう答えた。


未だに草山くんは自分の運命の人だなんて信じられなくて、何度も赤い糸を確認してしまう。


「なに? 俺の指になにかついてる?」


「な、なんでもないよ」
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