運命ノ黒イ糸
そこにあるのは灰色のビルで、どう見てもなんのお店も入っていない。


「ここの地下なんだ」


輝明はニコニコとして言う。


あたしは佐恵子と目を見交わせた。


こんな、なにもない廃ビルの地下なんて行っても大丈夫だろうか?


そんな不安がよぎる。


「佐恵子ちゃん。怖いなら今日は別の場所に行こう?」


そう言ったのは寺島だった。


輝明を前にして佐恵子は返答に困っている。


「なにが怖いんだよ。地下だからか? 俺の兄貴が店長なんだから心配ないって」


輝明はどこかイライラとした口調でそう言った。


なんだか険悪な雰囲気になりそうだ。


「じゃあ、先にあたしが中の様子を見て来るよ。それで大丈夫そうなら、佐恵子を呼ぶから」


あたしは2人の間に入って言う。


「うん。じゃあそうしてくれる?」


佐恵子はホッとしたようにそう言ったのだった。
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