運命ノ黒イ糸
☆☆☆

「え?」


ハサミを手に持ったまま、あたしは部屋の中で立ち尽くしていた。


黒くなった赤い糸を切ろうとしたのに、ハサミの刃が入らないのだ。


「どうして……?」


焦り、何度が挑戦してみる。


しかし結果は同じで、糸は有刺鉄線のように固くなってしまっているのだ。


「嘘でしょ? 冗談だよね?」


焦りで背中に汗が流れて行く。


この糸は絶対に切れるはずだ。


それで、あたしをもっといい人と結び付けてくれる!


そんな糸のはずなんだ……!!


「ハサミがダメなら、別の工具を使えばいんだ!」


そう閃いて、あたしはすぐに父親の工具を探し始めた。


日曜大工を趣味にしているので、裏庭に出れば沢山の工具が置かれている。
< 198 / 245 >

この作品をシェア

pagetop