運命ノ黒イ糸
あたしは驚いてその光景をマジマジと見つめた。


女子生徒は嫌がる素振りも見せず、照れたように赤くなっているのだ。


「あの子、高原くんの彼女なんだろうね」


佐恵子の言葉も耳に届かない。


嘘だ。


あんなデブに彼女ができるなんて、嘘だ!


しかし、2人はどう見ても付き合っていた。


とても幸せそうにほほ笑み、高原は優しく手を握りしめている。


次の瞬間あたしは駆け出していた。


あたしがあの時高原と付き合っていれば、今あそこにいるのはあたしだった?


そんな考えが過り、ブンブンと強く頭をふってかき消した。


ううん、やっぱり高原と付き合うなんてありえない。


それなのに……胸の奥の方がグジュッと溶けてなくなったような、そんな気がした。
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