運命ノ黒イ糸
「別れよう」


あたしは、輝明の言葉を遮ってそう言った。


一瞬、周りが静まり返った。


遠くから聞こえて来る生徒たちの声も、耳に入ってこない。


「は?」


輝明の笑顔が、ゆっくりと消えて行った。


怒っているわけでも、泣いているわけでもない、冷たい無表情であたしを見つめる。


その顔に全身が冷たくなっていく。


輝明は綺麗な顔だから、無表情が余計に怖いのだ。


あたしは自然と後ずさりをしていた。


「今、なんて言った?」


低く、抑揚のない声。


「やめよろ草山」


恐ろしい雰囲気を感じ取って寺島がそう声をかける。


しかし、輝明はあたしへにじり寄る足を止めなかった。
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