運命ノ黒イ糸
「やめて……こないで……」


逃げ出したくても、足が震えて思うようにいかなかった。


次の瞬間、輝明の拳が強く握られるのを見た。


逃げなきゃ!


そう思って体の向きを変えた時、輝明の拳が持ちあがるのを見た。


間に合わない……!


身を縮め、ギュッと目を閉じる。


バシッ! と鈍い音が聞こえてきたと思ったら、何かが倒れる音、ぶつかる音が立て続けに聞こえて来た。


「寺島くん!」


佐恵子の焦った声を聞いて、あたしはようやく目を開けた。


同時に、走り去っていく輝明の後ろ姿を見た。


「どうしよう、どうしよう」


「佐恵子、どうしたの?」


そう言って顔を向けた瞬間、倒れて頭から血を流している寺島の姿を見た。
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