運命ノ黒イ糸
☆☆☆

病院内はとても静かで、そして消毒液臭かった。


運ばれて来た寺島は今緊急手術を受けている。


怪我の様子から見て命に別状はないそうだけれど、もしかしたら後遺症が残るかもしれない。


あたしは放心状態で手術室の扉を見つめていた。


さっき到着した寺島の両親も、佐恵子も、ずっと泣きじゃくっている。


なんで、こんなことになったんだろう。


あたしが赤い糸を切ったから?


こんな相手は嫌だと駄々をこねて、運命の相手を変えたから?


あたしは、黒くなった糸を見下ろした。


気が付けば涙が流れていて、リノリウムの床にポタッと落ちる。


何度も何度も切った。


そうすればもっと素敵な相手と結ばれると思った。


その結果が……これ?
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