運命ノ黒イ糸
しかし、あたしの小指の赤い糸は確かに玄関の外へと続いている。


ハッとして、慌てて母親の後を追い掛けた。


「もしかして、見えてないの?」


出勤準備をしている母親はへ向けてそう聞いた。


「見えてないって、なにが?」


「この糸だよ!」


そう言い、もう1度自分の小指を母親へ見せた。


そこにはしっかりと赤い糸が結ばれている。


「お母さんにはなにも見えないわよ?」


「お父さんにも見えない」


話を聞いていた父親がそう言って来た。


「嘘……」


「まさか、朱里には運命の赤い糸でも見えてるのか? 案外ロマンチストだなぁ」


父親はそう言って豪快な笑い声を上げた。


運命の赤い糸……?
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