運命ノ黒イ糸
「しらばっくれてなんてないよ? ただ、沢山の生徒に聞いたから、誰が教えてくれたかわからなくなったんだ」


なんでもないようにそう言う高原に、あたしと佐恵子は目を見交わせた。


「1組の生徒、何人くらいに聞いたの?」


佐恵子が、恐る恐るという雰囲気で高原に訊ねる。


「えっとぉ~」


高原は記憶を呼び起こすように視線を空中へ投げて「1人、2人」と、指折り数えはじめた。


それが10人に到達したとき、あたしは大きくため息を吐き出して「もういい」と、一言言った。


それだけの人数に聞いているのなら、もうクラス中で知らない子はいないだろう。


もし、あたしと高原が妙な噂になっていたら?


そう考えると腸が煮えたぎった。


もう一秒たりとも、こいつの顔を見ていたくない。


あたしはそう思い、大股で教室へと入って行ったのだった。
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