運命ノ黒イ糸
不意に、その子がこちらへ視線を向けた。


あたしと視線がぶつかり、戸惑ったような表情になる。


しかし、その頬はほんのりと赤らんでいる。


「誰を見てるの?」


佐恵子にそう聞かれて、あたしは教室の後ろ側のドアへと近づいた。


「あの子」


そう言ってさっきの男子生徒を指さす。


「あぁ、確か……大田君だっけ?」


佐恵子がそう言ったので、あたしも彼の名前を思い出した。


そうだ、大田達治(オオタ タツジ)だ。


そこまで思い出すと、大田君がステージに立っていた姿も鮮明に思い出されてくる。


人前で気恥ずかしそうにしながらも、しっかりと新入生代表の役目を果たしていた。


「あの……僕になにか用事ですか?」


あまりにあたしが見ていたからだろう、大田君が近づいてきてそう声をかけてくれた。
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