無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
「朝陽、今岩沢さんに何か渡してなかったか?」

「ああ、昨日の課題のお礼渡してきた」

「お前、そういうとこ律儀だよなー。
俺なら礼言って終わりだわ」

俺も俺もー。と周りの友達が笑ってる中、大体指定席になりつつある椅子に座って頬杖をついた。

「でも、岩沢さんってちょっと近寄りがたい気がするよな」

「わかるわかる!美人なんだけど、美人すぎて近づきにくいって言うか……」

「表情もあんま変わんないし、言い方もキツいんだろ?
彼女にするにはちょっと遠慮したい感じだよなー」

お前の彼女とか向こうから断ってくるってー!と好き勝手に話している友人達の話を聞きながら、長椅子に置いていたバッグから何か探すふりをして下を向けた顔に笑みを浮かべた。

確かに彼女は美人だ、それ故にハッキリした物言いは他の人よりキツく感じられるし近寄りがたい雰囲気にもなっている。
けれど、表情が変わらないというのは相違ある。
さりげなく後ろを振り返って見ると、さっき渡した紙袋を見つめて目を細めている真未が見えた。
本人も気づいていないのだろうが、口元は僅かに上がっていて微かに微笑んでいるのがわかる。

僅かな彼女の表情の変化に誰も気づかないようで、それにほんの少しの優越感を感じる。
バッグから課題のノートを出して机に置いたところですでに話は別の話題に変わっていた。
話に加わり笑いあいながら思う、そのまま誰も気づかなければいい、そして俺だけが知っていればいいんだ。
彼女の魅力にーー
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