無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
「うわっ!」

「きゃっ!?」

バシャンッ!!と水の音と飛沫が上がり二人同時に目を瞑り恐る恐る目を開けると、真未は朝陽を思い切り押した反動でバランスを崩し川の中で尻餅をついていて、朝陽はびくともしなかったが上がった水飛沫によって頭から濡れていた。
ガサガサッと先程の茂みで再び音が聞こえて視線を向けると、そこには小さな兎が飛び出してきてそのままどこかに行ってしまった。

暫く呆然とその姿を見送っていた二人だったけど、どちらからともなく吹き出すとやがて二人で声を出して笑っていた。

「真未、転けるなって言ったのに」

「だって、誰か来たと思ってビックリしたんだもの。
それに、何で思い切り押したのに朝陽はピクリとも動いてないの?」

「これでも鍛えてるからね。
柔道大会優勝の彼女を護るためにはそれ以上に強くならないと」

そう言いながら手を差し伸べてきた朝陽に手を伸ばすと、ぎゅっと握られ同時に力強く引っ張られた。
お互い濡れたしキャンプ場に戻ろうかということになり手を繋いだままゆっくり歩きだす。

その時ふと、朝陽に伝えようと思っていたことをまだ伝えていなかったことを思い出し、真未はゆっくり口を開いた。
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