無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
「お待たせ、待った?」

「ちょっとしか待ってないよ」

「そこ、嘘でも待ってないって言うんじゃなかったの?」

嘘ついても意味ないんでしょ?と悪戯に笑う真未に苦笑して、とりあえず行こうかと手を差し出すと以前と違って躊躇うことなく手を伸ばして自然と手を繋ぐようになった。

「今日ライブ終わったら勇人兄さんが楽屋に遊びに来ないかって」

「え!?」

前もって勇人には真未が奇跡的にもライブチケットを手に入れたことを話したら、それならライブ後の楽屋で話さないかと誘われていた。

顔見知りでもあるKaiserのもう一人のメンバーである拓也が“あの”朝陽の彼女を是非見てみたいと言い出したからなんだそうだが、“あの”って何だと突っ込んで聞きたかった。

「んー……すっごく行きたいけどやめとく」

「何で?いいの?」

「いいの。
だって、ライブの後ってすごく疲れるんでしょ?
そんなクタクタな状態なのに会いに行って、さらに疲れさせちゃったら悪いもの」

自分の楽しみのことよりも相手のことを気遣える真未がとても眩しく見えて、朝陽はふっと微笑んで立ち止まるとぎゅっと抱き締めた。

「もー……本当に俺の彼女って優しくて大好き」

「ちょっ……やめてよこんなところでっ!」

「いいじゃん、見せつけちゃおうよ。
俺はこんなに美人で優しくて格好いい人が俺だけの彼女だってみんなに自慢したいくらいなんだけど」

「そんなことして誰が得するのよっ。
もう、離してったら!」

時間はまだたくさんある。
町行く人達が様々な反応を示す中、朝陽は自分が満足するまで真未の抵抗をものともしないでしっかり抱き締めるとキスの雨を降らせてた。
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