無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
「朝陽のバカ……もう一緒に出掛けない……」

「ごめん、悪かったって、許して?」

無事にライブが行われるドームに着いて席に座ると真未はぐったりした様子で両手を顔に当てて蹲った。
大勢の前で抱き締めたりキスしたりしたのがよほど恥ずかしかったらしく、真未はまだ耳まで真っ赤になったままだった。

「本当に悪いと思ってるの?」

「思ってるって、ああいうのは二人きりの時にするべきだよな。
可愛い真未の顔を誰かに見られそうでひやひやし……」

「反省するところが違うでしょ!」

朝陽はスキンシップが激しすぎるのよ!と周りに聞こえないように小声ながらも怒ってくる真未が可愛すぎて朝陽はもう一度キスしたい衝動に駆られたけれど、こんな場所でそんなことしたら暫く口を利いてもらえなくなるかもしれないと朝陽はグッと我慢した。

「わかりました、少し自重します」

「朝陽の場合、少しじゃなくてたくさん自重した方が丁度良さそうなんだけど……」

その言葉に一理あるなと自分のことながら納得していると、不意にドームが暗くなり始めた。
そろそろライブ開始の時間なのだろう、周りに合わせて朝陽は立ち上がると真未に手を差し出して微笑んだ。
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