無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
一瞬何も見えなくなり、思わず繋いでいた朝陽の手をぎゅっと握ると誰もいなかったはずのステージのど真ん中にスポットライトが当たり、そこにはKaiserの二人が立っていた。

目の前にいる大ファンの二人に感動していると会場内に突然大きな音が響き渡り、初めてライブに来たこともあって、あまりの大音量に驚いてビクッと反応してしまうと手を繋いだ先、朝陽の手が小刻みに震えていて笑いを堪えているのを感じ取った。

「朝陽、ひどい」

「や、ごめん。
可愛いなって……」

「……知らないっ」

小声で話してぷいっとそっぽを向くと真未も朝陽も後は周りに合わせてライブに集中した。
Kaiserの歌声は時に激しく、時に甘く、時に切なくて、あっという間に心を捕まれて夢中にさせられた。

『みんなー!楽しんでるー!?』

楽しんでるーっ!!

『Kaiserの古河拓也です!今日も一日盛り上がるぞーっ!!』

おーっ!!

最初のMCに入ると、ほぼMC担当となっているらしい拓也が上手い具合に会場を盛り上げている。
真未と朝陽も例外なく盛り上がっていると、拓也の隣にいた勇人がマイクを握った。
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