無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
『わかった、ライブが終わるまでには必ず見つけ出す』

『あんまりそっちに集中しすぎてライブが疎かになるのだけは勘弁な?』

『わかってる。
いつも通り、全力で最高のライブにしてみせる』

勇人がそう言った瞬間に、きゃーーっ!!と歓声が上がった。
なんでも勇人がそんな言葉をMC中に言うのはとてもレアなんだそうで、勇人ファンは跳び跳ねそうな勢いで喜んでいた。

勇人は宣言通り全力で歌って躍り、拓也と共に会場全体を盛り上げていた。
真未も全力でライブを楽しんでいると途中、勇人と目が合ったような気がして思わず目を見開いた。

反らされることのない視線に真未が慌てて朝陽を見ると、さすが勇人兄さん、気づいたな。と苦笑していた。

いや、ステージからはかなりの距離があるはずなんだけど!?と驚いているとMCに入り、拓也が勇人に、見つけた?と聞くと勇人は頷いた。

『見つけた』

『えっ!どこどこ?』

『あそこ』

そう言って勇人は真未と朝陽がいる方向を示してマイクを遠ざけて詳しい場所を教えたらしく、拓也は目を見開くと何度も頷いた。

『本当だ、いた。
てか勇人よく見つけたな』

拓也の言葉に勇人は何も言わずにふっと微笑み、勇人に示された側にいた観客の人達は周りを伺い見ている。
とりあえず、大勢の前で晒されなくて良かったと安堵の息をついていると朝陽は何故か余裕の無さそうな表情をしていた。

「朝陽?どうしたの?」

「いや、何でもない」

苦笑する朝陽に首を傾げるがライブも気になってしょうがなくて、勇人も朝陽と真未がいるのを確認したかっただけなのか居場所がわかってからは真未達を気にすることはなくなり、ライブは滞りなく進んでいった。
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