無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
バイト先のパン屋にブーランジェとしてそのまま就職した真未の朝は早い。
朝の四時前には起きて朝食を用意し、支度をして四時半には家を出ないといけないので朝から仕事がある日は別々の部屋で寝ている。

一緒の家にいるだけでもドキドキするのに毎晩一緒に寝るなんて軽く死ねそうな恥ずかしさだ。
真未は朝陽を起こしたくないことを説明し、休みの日や昼からの仕事の時は一緒に寝ることを条件に別に寝かせてもらっている。

朝陽はまあ、とても渋々了承した感じだったけれど……。

店に入り、パンを仕込み、成形し、焼いていく。
そうして開店の時間になったら今日一番始めのお客さんとして変装した陽菜がやって来た。

「いらっしゃいませ」

「おはようございます、真未ちゃん」

「おはようございます、お姉さん」

お姉さんと呼ばれた陽菜は嬉しそうに微笑む。
モデルの陽菜の名前を外で軽々しく呼ぶには気が引けて、直接陽菜に相談したら、お姉さんって呼んで欲しいと言われたのだった。
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